人狼(Were Wolf)

半人半獣の代名詞、擬人化(昨今の「萌キャラクター化」の意に非ず)されたモンスターの代名詞と言っても良いでしょう。ウェアウルフライカンスロープとも呼ばれる『人狼』。一般人に理解し安い最も俗な呼び名で言うならば『狼男』。
その起源は古く、遙か神話の時代まで遡り、現在に至るまで文学作品から映画・マンガ・ゲームといった娯楽作品まで、数多くのメディアで愛され続けている存在である。
また、古来、「狼憑き」「獣化症候群(ライカンスロピィ)」といった「実際に人が変じ存在するもの」として扱われ、「吸血鬼」といった存在と共に、数ある化け物どもの中でも、最も身近で、恐怖され続けてきた存在と言えよう。



私が、この『人狼』という存在に心を奪われた切っ掛けは、今となっては覚えていないが、映画や小説といった作品からではない。
幼少の頃からゲームというものが身近にあった世代である私は、当然ゲームからも影響を色濃く受けるわけで。
この人の姿をした狼が心に刻み込まれたのは、ファンタジー世界を舞台にしたRPGの敵役としての姿だった。
嗚呼、何度その姿を目にし、追い込まれ、戦慄し、命を奪われたことか!(レベルが足りなくて)
ゲーム内で描かれるその姿は、作品が違っても大抵同一で、毛並み等は様々であるが、狼の頭が筋肉質な人間にくっついたもの。この狼頭人体の異形を、当時の私は美しいと感じ、また変身ヒーローのようなかっこよさを感じていたのである。



だからこそ、映画に出てくる「狼男」には非常に幻滅したのを覚えている。当時の特殊メイクの造形の限界、半獣人に対するアメリカ人のイメージ、そう言った物で作り上げられたクリーチャーの姿は、私にとっては『猿の惑星』の猿たちや『西遊記』の堺正章と何ら変わらない印象だった。
やはり狼男は狼頭に限る。映画では『Dog Soldiers』(2002 イギリス)・『UNDERWORLD』(2003 アメリカ)・『Van Helsing』(2004 アメリカ)などは、非常に心躍らされる造形をしていたのでご紹介しておこう。



ビジュアル的に表現されている「人狼」には幾つかのタイプがある。


1つは「半獣人型」。これは古き良き時代のホラー映画の姿が代表的な物で、人間と獣を足して混ぜ合わしたようなもの。ベースは人間であり、獣のエッセンスが混ざっていると言った物。映像メディアで使用される際、特殊メイクのみで表現される場合の姿である。人狼モノと思って見ていた映画の最後の最後で、出てきたのがこの半獣人型の人狼だと、テレビが壊れるか人死にがでるかどちらかだ。


もう1つは「完全狼型」。古来より伝承・神話などで表現されているのはこの形であろう。通常の狼に比べ、体躯がおおきかったりはするが、完全な狼の姿に人が変じるというもの。または人の姿に変ずる狼の元の姿であることも。
見た目「人狼」と言えないかも知れないが、この場合は「狼への変身能力を持った人間(またはその逆)」という意味の人狼である。ビジュアルイメージとしては手塚治虫先生の『バンパイア』、これのテレビシリーズ(主演:水谷豊)のが近いかな?
このタイプは狼の姿しか持たない場合も存在する。人または中間的存在に姿を変じないということ。この場合は、化け物的な狼・高等な狼として表現される物で、やたらとでかかったり、高等知能で人語を使えたり、そのまま2本足で歩いたりする。狼の姿は好きなので、嫌いではないのだけれども「人狼」と呼ぶには抵抗があるなぁ。


最後の1つは「狼頭人体型」。狼の頭に人間の体。この姿は絵画的表現としてはずっと昔から使われてきているものだが、狼の擬人的表現として使われているこの途方が多い。ファンタジーを題材とした話やゲーム・マンガでは、最早この形態が抄紙機と言っても良いだろう。映像メディアで使われる際は、アニマトロニクスの使用が必然となるため、低予算のテレビ番組等ではお目に掛かることは出来ないだろう。



人狼が私を魅了する要素は3つ。
『「狼」の造形の美しさ』
『人以上のモノへの変貌』
『獣の本能以上の狂気と人外の暴力』
好きな化け物は数多けれども、自分が変じてみたい化け物といえば、この人狼が1・2を争うなぁ。
また機会が在れば、もうちょっと掘り下げてみよう。

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